シュルプリィズ


森茉莉の「私の美の世界」を読んでいて、フランス語の「シュルプリィズ」という言葉を知りました。

巴里の映画館で、シュルプリィズ(お楽しみ)といって売っていたボンボンの箱があって、中から何かしら面白い玩具が出て来たが、その中に、サボ(木靴)の形のネクタイピン(黄金色のと銀色の)があまりに素敵なので持って帰り、弟が一寸した他所ゆきに挿していたが、ひどくシックだった。
その中にはノオトゥル・ダムの欄干に肘をついて巴里を見下ろし、気味の悪い薄笑いを浮べているシメエル(石で出来た怪物)や、メフィスト(ワグナアのファウストの中に出てくる悪魔)、珠を捧げている埃及の奴隷なぞのデザインのブロオチもあったが、どれも面白かった。ギャトオ・アルジャンテ(クリスマスケエキの上の銀の粒)をしゃぶったあとのような練りものの真珠の頸飾りや、ガラス製のエメラルドのネクタイピンなぞの、知恵のないものも中にはあったが。
                       森茉莉 「黄金と真珠」より


ほの暗い映画館で小さな箱をこっそり開け、ひとりくふりとほくそ笑むような、ごくごく個人的な秘かな愉しみ、という風に連想させる「シュルプリィズ」という響きをとても気に入りました。これらの箱に、そんな愉しみがあればいいなと思います。
余談:(プチ・ロワイヤル仏和辞典をくっていると、「pochette surprise」で福袋だって、かわいい!)

オレンジの実のようなボタンのついた、花とフルーツ柄のキャビネットには、フルーツ・キャンディや梨のブローチを入れたり。

ちょっぴり東洋的な雰囲気の、八角形の小箱には、翡翠でできた帯留めを入れたり。

この布は、じっくり見るととても面白い花柄です。退色していますが、ベージュ色の枝からいろんな種類の花や蕾がついています。ハートは散った花びらかと思ったら枝から咲いていた!ガラスのボタンは30年代のドイツのもの。

ペパーミント・グリーン、スモーキー・ブルー、レッド、好きな色の組み合わせ!この小花柄を見ていると、アナ・トレントが出ていた「カラスの飼育」の姉妹を思い出します。なんとなく小花柄のブラウスを着ていたイメージがあるのです。

花やバタースカッチや飴細工みたいなボタン(右下のガラス以外)と布は全てフランスの古いものです。キャビネットは、上に細々したものを飾ったりするのも愉しいかもしれません!