エメラルド


子どもの頃、夏休みに祖父母の家に泊まりに行くと、色々なものを用意して待っていてくれた。お手製のクリーム・ソーダやお風呂上がりに飲むジュース、遊ぶための子ども用のじょうろやビーズなど。デパートや海に連れて行ってもらったり、朝顔で色水を作ったり、バス停まで祖父を迎えに行ったり、出前のうどんをとってもらったり、一緒にテレビを観たり、姉妹ゲンカをしたり、祖母がお化粧するのをじっと見たり、たまには宿題もやって、楽しくて仕方なかった。
ある日の夜、眠るために横になっていると、暗がりの畳の上に、昼間遊んだビーズが一粒ころがっているのが見えた。しばらく手で玩んでいて、ふと鼻の中に入れてみた。ぴったり・・・と思っていたら取れなくなった。大人が起きている部屋に行って訴えるとみんな驚いて、一生懸命取ってくれようとするけれど、なかなか取れない。結局、タクシーに乗せられ夜の病院に行き、ピンセットで取ってもらった。鼻血が出た。みんなに笑われ、もう二度とビーズを鼻になんか入れない、と心に決めた。エメラルド色のビーズだった。